- 成年後見人制度…銀行は「成年後見人」なら入出金に応じる
- 任意後見人制度…任意後見人制度は使い勝手が良い!
- 本当は凄い…遺言の効力は凄いんです!
- 家族信託とは・・・財産の変化球を投げることができます
- 尊厳死宣言
- 死後事務委任契約
2025年700万人時代へ!(65歳以上の1/5人)認知症ですべての契約がストップする!?
〇認知症患者、資産200兆円に、30年度、マネー凍結懸念、対策急務
〇認知症とお金(1) 預金を引き出せない
〇認知症とお金(3) 父の家を売れなくなる
2018/8/26・10/15・10/17いずれも日経新聞朝刊記事より
厚労省のデータによりますと、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症と推計されています。これはもう決して他人ごとではありません。もし、家族の誰かが認知症になったら生活はどう変わるのでしょうか。認知症がもたらす生活への影響について具体的にみていきたいと思います。
認知症対策を前もってしておいた方が良い実質的な理由
認知症になると原則として契約ごとが本人単独では有効に成立しなくなります。
「契約なんて普段の生活には関係ないから大丈夫」なんて思っていませんか。実は毎日の生活は契約の塊であると言っても過言ではありません。その結果、何の対策も打たないままでいると大変なリスクに直面する恐れがあるのです。代表例は銀行預金の出し入れです。銀行は前述の記事タイトルにもあるように預金者が一定程度以上の認知症である事を知ると入出金に応じてくれません(預金の凍結)。
認知症家族の面倒を看ていらっしゃる親族にとってそれが何を意味するのか…
容易に想像できるのではないでしょうか。
また、事前に何の対策もしないまま認知症が進むと、銀行取引の他にも、介護保険契約、施設入所契約、不動産の各種契約、遺言などもできなくなってしまうのです。
認知症対策のいろいろ
認知症リスクを回避するためには事前に対策をする必要がありますが、目的や家族構成、財産内容などによって様々な方法があり、場合によってはそれらを組み合わせるなどオーダーメイドで対策を設計する必要があります。以下では代表的な対策についてみていきます。
成年後見人制度…銀行は「成年後見人」なら入出金に応じる
成年後見人とは、認知症の本人に代わって契約をする「人」のことです。その成年後見人には勝手になることは出来ず、家庭裁判所に申立てをし、選任を受けなければなりません。手続きには1~3か月程度の期間が、また、戸籍関係書類等多くの書類を集めなければならないため、一般の方にはハードルが高いかもしれません。
成年後見人になると凍結された本人口座から預金を引き出すことが出来ますが、成年後見人には厳格な帳簿作成と家裁への提出義務が課されます。しかし裏を返すと、管理が厳重で、後見人による本人財産の使い込み(横領)を防ぐという効果があるため、その点が成年後見制度のメリットと言えるかもしれません。
しかし、成年後見制度には、そんなメリットを吹き飛ばしかねないデメリットが潜んでいるのです。
成年後見人はたったの3%しかいない(保佐人・補助人を除く)
認知症患者が推計約500万人なのに対し、成年後見人は約16.5万人(2017年末時点)しか選任されていません。それは何故なのでしょうか。おそらく、メリットよりもデメリットが多く使い勝手が悪い制度だから、だと思います。以下、具体的にみていきましょう。
成年後見人制度の3大デメリット
①家族がなれない
たとえ家族が後見人になりたくても、70%以上の割合で弁護士等の専門職が選任される
専門職後見人に通帳その他一切の財産を預けなければならない
専門職後見人には財産の量に応じて報酬が発生する(安くても年額25万円程度)
②家族のためには使えない
成年後見制度は本人保護の制度なので、たとえ家族のためであっても原則としてその財産を支出することは出来ない(扶養義務や婚姻費用を除く)
③現状維持だけ
運用は原則できない
不動産なら補修・修理は出来るが改良は出来ない(例えば雨漏り補修は出来ても外装の塗り替えは出来ない)
任意後見人制度…任意後見人制度は使い勝手が良い!
後見人の制度には前述の成年後見のほかにもう一つ、任意後見という制度があります。成年後見が認知機能低下後の対策であるのに対し、任意後見は、あらかじめ将来の認知機能低下に備える事前対策です。そして、選任から就任後の任務、手続きに至るまで法定されていて家庭裁判所の厳格な管理を受ける成年後見人に対し、任意後見人は、文字通り任意に(自由に)後見人を選ぶことができるのです。さらに、後見任務の内容(財産管理の内容)についても、ご自身の想いや目的に応じオーダーメイドでプランニングをすることが出来ます。
これは、判断能力がしっかりしているうちに事前に対策をするからこそ可能なのであり、任意後見が成年後見と違って使い勝手が良い制度であるというのはそのためです。(以降、任意後見とのバランスで成年後見を法定後見と呼びます)そんな使い勝手の良い任意後見制度ですが、任意後見人にはできないことがあります。
本当は凄い…遺言の効力は凄いんです!
後見制度はいずれも本人のための制度ですので本人死亡により後見人の任務は終了します。そのため、後見人は遺産をコントロールすることは出来ません。それを可能にするのが遺言です。遺産はもともと本人の財産ですので、相続人間の争いを防ぐためにも、あらかじめご本人自身が遺言で財産の分け方をしっかり決めておくことを強くお勧めします。遺言がなければ、ほとんどの場合、遺産分割協議を経なければ遺産分割はできません。それが争族を招くのです。親の介護へのかかわりの程度や同居の有無、それぞれの家族状況などご遺族の考えはさまざまです。そんなご遺族同士が遺産を巡り協議をする訳ですから協議はスタートの時点でトラブルの要素を抱えてしまっていると言っても過言ではありません。遺言がなかったために遺産分割を巡って仲の良かった身内同士が絶縁状態という例はいくらでもあります。そして、富裕層ではなく一般庶民ほど揉める割合が高いことが分かっています。
もう一度申し上げます。遺言を書くことを強くお勧めします。
遺言の効果は絶大です。遺言さえ書いておけば原則遺産分割協議の必要がなく、遺言の内容に従って遺産分割をすることが出来るのです。そのため遺言があれば協議の必要はありませんので、必然的に争族リスクを軽減することができます。しかも遺言はご自身で書くこともできますし、我々専門家に相談していただいてもそれほどコストは掛かりません。
そんな遺言にも弱点はあります。それは、当然と言えば当然かもしれませんが、遺言で遺産をコントロールできるのは1回限りということです。
例えば「自宅は一旦妻に渡し、妻が亡くなったら売却して子供たちで分ける」は遺言ではできないのです。遺言はいわば直球勝負です。「妻に渡す」のなら、遺言で投げられるボールはその直球一球だけです。一旦妻が受けた自宅というボールは妻の所有物になりますので、夫の遺言で妻が亡くなった後のことまでコントロールすることはできません。変化球は投げられないのです。妻が生前に自ら売却して分けるなら別ですが…。
家族信託とは・・・財産の変化球を投げることができます
先ほどの「一旦妻でその後は子」という例は家族信託という制度を使えば簡単に実現することができます。
家族信託とは、一言で言うと、自身の死後もその財産の行方を変化球のごとく複数代先までコントロールすることができる制度なのです。家族信託(民事信託とも呼ばれますが信託銀行は必要ありません)は比較的新しい制度なのですが、とても奥が深く、また、難解な制度でもあります。しかし、活用範囲がとても広く、設計次第で様々に応用することができます。たとえば、先ほどの事例を応用すれば、自身の死後、子のいない夫婦が代々の家産を一旦夫や妻に渡すが、その後は自身の兄弟姉妹や甥姪に継がせることで姻族側へ渡らないようにすることも可能です。また、障がいを抱えた子や病弱な子のためのいわゆる「親亡き後問題」へと応用することもできるのです。(詳しくはお問合せください)
尊厳死宣言
肺には人工呼吸器から酸素が送られ、胃には栄養を送り込むためのチューブが…。
病気や事故等で回復の見込みがない末期状態であったとしても、医療の進歩は「生かし続けること」を可能にしました。いわゆる延命治療です。
「どんなことをしても生きたい」そんな選択もあると思いますし尊重されるべきだと思います。片や、「チューブに繋がれて、ただただ生かされるくらいなら、安らかな最期(尊厳死)を選択したい」という思いも尊重されるべきではないでしょうか。生死観は人によりさまざまであり、己の最期は己で決着をつけたいという考え方も十分尊重されるべきだと思います。
一方、家族は辛い選択を迫られます。「少しでも長く生きていて欲しい」と「早く楽にさせてあげる方がいいの?」の狭間。そこに立たされるのは家族だからです。さらに、のしかかる経済的負担。不謹慎かもしれませんが切実な問題ではないでしょうか。そして、もし本人が尊厳死を望んでいてもそれを知らない家族にとって延命治療を拒否することは「死なせる」こと。家族にその選択をさせることがいかに酷なことかは想像に難くないはずです。
尊厳死とは、簡単に言えば「回復の見込みのない末期状態における過剰な延命治療を拒否し尊厳を持って迎える自然な死」のことですが、現在の日本には尊厳死に関する法制度が整っていないため確実に尊厳死を選択できる方法はありません。しかし、自己決定権尊重の考え方が日ごとに浸透しており、近年では尊厳死宣言書を作成、提示することによって9割以上の医療現場で尊厳死が受け入れられるようになったといわれています。
もしもの時、ご自身のため、そして、ご家族に安心して決断してもらうためにも、あらかじめ尊厳死宣言書を作成しておくという選択があります。
死後事務委任契約
死後の手続きは、遺産分割だけではありません。葬儀や埋葬、住宅や身の回り品の整理、処分、公共料金やクレジットカード等各種契約の解約手続きなどたくさんの手続きや作業をする必要があります。親族など身近に託せる方がおられる場合は安心ですが、身寄りのない方、いても頼りたくない、迷惑を掛けたくないという方、人により事情は様々だと思います。
・大好きなアーティストの音楽で送って欲しい
・遺骨は太平洋の大海原に散骨して欲しい
・葬儀、埋葬が終わった後、親族や友人知人に手紙を届けて欲しい
・お世話になった大家さんに迷惑を掛けないように契約や家財道具の始末を頼みたい
あらかじめ死後事務委任契約を結んでおくことで、それらを実現させることができます。
いかがでしょうか。
事前対策の中でも代表的な制度について簡単に紹介させていただきました。一口に事前対策といってもその目的や、ご本人、ご家族、また、資産内容等によって内容は様々であり、事前対策に王道はありません。ですが、大事なことは、事前対策は判断能力がしっかりしている間に、文字通り『事前にしかできない』ということです。何もしないまま判断能力が減退してしまうと、その時点で出来るのは事後対策である成年後見制度のみということになりかねません。
その時になって後悔しないためにも、あなた自身やご家族のためのオーダーメイドの対策を考えてみませんか。
初回相談は無料です。
お早目のご相談をお待ちしています。